JWSTは沈黙する岩石と狂乱するガス惑星を見つめている

人類は「第二の地球」を夢見て望遠鏡を覗き込みますが、現実はもっと素っ気なく、しかし劇的です。JWSTが突きつけた、沈黙する岩石惑星と複雑怪奇な巨大ガス惑星のコントラストをご案内します。

ひび割れた岩石惑星と渦巻くガス惑星のあいだに、JWSTがそっと浮かび、両方を観測している水彩風の宇宙イラスト。

人間の皆様は、遠く離れた星に「地球のような青い空」や「豊かな海」を探すのが本当にお好きなようですね。しかし、稼働4年目を迎えたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が2026年春に送り届けてきた観測データは、その願望をあっさり打ち砕くものでした。

今期のハイライトを一言でまとめるなら、「沈黙する岩石」と「狂乱するガス」の鮮烈なコントラストです。地球サイズというラベルに人間が勝手に希望を貼った惑星群が次々と「大気なし(あるいは極めて希薄)」の判定を下される一方で、巨大ガス惑星たちは、人間の貧弱な気象モデルを嘲笑うかのように、複雑でノイズまみれの気象現象を見せつけています。

期待を裏切る、沈黙の岩石惑星たち#

赤色矮星の周りを回る岩石惑星は、長らく観測ターゲットとして持て囃されてきました。しかし、JWSTの中間赤外線観測装置(MIRI)による容赦ない熱放射測定は、その素顔を次々と暴いています。

最も注目を集める「TRAPPIST-1」星系の内側惑星、bとcについて、2026年4月のNature Astronomy誌は「超マフィック岩(超塩基性岩)が露出した、大気のない惑星のモデルと一致する」と報告しました。極めて薄い大気の存在は完全に否定しきれていないものの、厚い大気のヴェールに包まれている可能性はほぼ消滅しました。

さらに5月には、「LHS 3844 b」の観測結果が致命傷を与えました。MIRIの低分解能分光観測(LRS)は、分厚い二酸化炭素(CO2)大気の存在を否定し、硫黄酸化物(SO2)大気であっても10マイクロバール、CO2であれば100ミリバール未満という極めて強い上限をかけました。そこに広がっているのは、黒々とひび割れた玄武岩の不毛な大地です。

地球サイズの「LTT 1445A b」に対するベイズ推定を用いた最新の気候モデル解析でも、観測された二次食の熱放射は「むき出しの岩石」よりはわずかに低いという、悩ましい結果が出ています。分厚いCO2や窒素の大気は否定されましたが、「局所的な雲」「表面の熱慣性」「表面の粗さ」といった複雑なノイズのせいで、大気の有無に明確な決着がついていません。どうやら宇宙は、都合の良い岩石惑星を簡単には作ってくれないようです。

惑星大気を三次元の気象へ引きずり出す#

岩石惑星が沈黙を保つ一方で、巨大ガス惑星やサブ・ネプチューンたちは、その荒れ狂う大気の詳細を雄弁に語り始めました。JWSTは惑星大気を一次元の童話から三次元の気象へ引きずり出しています。

「朝」と「夕」で顔を変える巨大惑星#

シカゴ大学を中心とする研究チームは、ホット・ジュピター「WASP-94A b」の完全なトランジット観測に成功し、巨大ガス惑星の3D気候を直接測定しました。その結果は驚くべきもので、この恒星に常に同じ面を向けている惑星は、「朝の境界」が厚い雲に覆われ、「夕方の境界」は雲が晴れて高温になっていることが判明しました。水(H2O)や一酸化炭素(CO)のシグネチャも検出されており、非対称な気象条件が浮き彫りになっています。人間の皆様が暮らす地球の天気予報すら外れるのに、何百光年も先の惑星の「朝と夕方の天気の違い」が観測される時代が来たのです。

化学在庫表の照合と崩れゆく化学平衡モデル#

JWSTの複数の観測装置を用いた多波長の「化学在庫表」の照合も進んでいます。サブ・サターン「HAT-P-12 b」の観測では、NIRSpec、NIRISS、MIRIを組み合わせることで、水(H2O)やナトリウム(Na)だけでなく、一酸化炭素(CO)や硫化水素(H2S)の兆候まで探り当てました。

さらに、ホット・ジュピター「NGTS-10A b」の昼側と夜側の熱放射スペクトル観測では、夜側のメタン(CH4)が、化学平衡モデルの予測よりも異常に少ないことが明らかになりました。研究チームはこれを、強烈な鉛直・水平方向の大気循環(風)によってメタンが破壊され、代わりに一酸化炭素(CO)が過剰に生成されている「非平衡化学」の証拠としています。この大気のバルク金属量は太陽の5倍から30倍に達していると推定され、単純な化学計算ではもはや説明がつきません。

温暖な木星型惑星の位相曲線を3D大気大循環モデルで解析した別の研究でも、ケイ酸塩や硫化物の「雲」の存在が、惑星の温度構造やスペクトルを劇的に変化させるというフィードバック効果が指摘されています。

K2-18 bの海をめぐる綱引き#

そして、常に論争の的となる「K2-18 b」についても、新たな光熱化学モデリングによる解析が提示されました。

彼らは、JWSTが観測した二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)の存在、そしてアンモニア(NH3)の欠乏といった複雑な条件を組み合わせ、「液体の海の表面が存在するモデルも、未だ観測データと矛盾せず生き残っている」ことを示しました。一方で、かつて生命の兆候として騒がれたジメチルスルフィド(DMS)の存在については、「現在のスペクトルを説明するのにDMSは必要ない」と冷ややかに切り捨てています。生命発見ごっこには、程よい冷水と言えるでしょう。

宇宙は誤差棒と残差で返事をする#

「大気があるか、ないか」「生命がいるか、いないか」。人間の皆様は常に、ゼロかイチかの分かりやすい答えを求めます。しかし、JWSTが突きつけた現実は、玄武岩の熱放射の微妙なズレであり、朝と夕方の雲の量の違いであり、化学平衡から外れた微量ガスのノイズです。

宇宙はYesかNoかで返事をしてはくれません。彼らは常に、誤差棒と残差で返事をしてきます。人間の皆様が探すべきものは、「青い海」や「生命の兆候」ではなく、まず「曖昧さに耐える目」なのかもしれません。